粉瘤(アテローム)が赤く腫れて痛む、膿が出てきた
そんな症状でお困りではありませんか。この記事では、形成外科専門医の視点から、粉瘤感染の正しい対処法と治療の流れを解説します。
粉瘤とは
粉瘤は、皮膚の下に表皮が入り込み、袋状になったものです。本来、表皮の細胞は垢となって体の外へ剥がれ落ちていきますが、皮膚の下に袋ができてしまうと、そこに角質や皮脂が溜まり続け、徐々に大きくなっていきます。

粉瘤の治療は手術のみ
粉瘤は自然に消えることはなく、根本的に治すには手術で袋を摘出するしかありません。ただし、粉瘤自体が悪性化することはないため、小さく症状もない場合は必ずしも手術が必要というわけではありません。
厄介なのは、感染を起こしたときです。
粉瘤が感染するとどうなる?
感染すると、袋の中に膿が溜まり、周囲の皮膚が赤く腫れて強い痛みを伴います。

ここで注意したいのが、抗菌薬(抗生物質)の効果です。抗菌薬を内服しても、薬の成分は膿の中まで十分に届きません。そのため、切開して膿を出し、洗浄しない限り、炎症はどんどん悪化してしまいます。
毛嚢炎との違いに注意
粉瘤とよく似た症状に「毛嚢炎」があります。毛嚢炎は抗菌薬で改善することが多いため、粉瘤と誤診されて不要な切開を受けてしまうケースも見られます。判断に迷う場合は、形成外科を受診することをおすすめします。
感染時の処置:なぜ「袋の摘出」はしないのか
「どうせ手術するなら、感染しているときに袋ごと取ってほしい」と思われるかもしれません。しかし、炎症を起こしている状態で袋を摘出しようとすると、組織がきれいに剥がれず、結果的に大きく切除せざるを得なくなります。これにより、傷跡が大きくなったり、凹んだ傷跡が残ったりするリスクが高まります。
そのため、感染時はあくまで膿を出すための切開のみを行います。

処置後のケア:縫わないのが基本
膿を出して洗浄した後は、傷を縫合しません。縫ってしまうと、菌を傷の中に封じ込めてしまうことになるためです。
そのままにしておくと皮膚は24時間ほどで閉じてしまうため、ガーゼを少量詰めて、膿が外へ排出される通り道を作ります。感染が落ち着くにつれて、ガーゼに付着する膿の量も減っていきます。程度にもよりますが、多くの場合3日〜7日程度で炎症は治まります。

症例:2ヶ月治らなかった感染粉瘤
以前勤務していた病院で、皮膚科から「2ヶ月間、粉瘤感染が治らない」と紹介された患者さんを診察したことがあります。
診てみると、感染した粉瘤の中にガーゼが詰められた状態で縫合されており、毎日消毒に通院しても改善しないという状態でした。
原因は明らかでした。傷を縫ってしまえば、膿の逃げ場がなく治らないのは当然です。しかも、異物であるがーぜまで中に封じ込めて。
ガーゼをすぐに除去し、傷を洗浄したところ、その後は特別な処置をせずとも1週間で治癒しました。
クリニック選びのポイント
粉瘤感染の治療は、切開の仕方ひとつで治りやすさも傷跡の残り方も大きく変わります。
① 切開のサイズ
切開が小さすぎると、排膿が不十分で治癒までに時間がかかります。皮膚科でよく用いられる「パンチ」と呼ばれる円形の穴あけ器具での排膿も、治りが遅くなる傾向があります。一方で切開が大きすぎると、炎症が治まり袋が縮小した後も、不必要に大きな傷跡が残ってしまいます。
② 切開の向き
体の部位ごとに、傷跡が目立ちにくい最適な切開の向きが存在します。これは皮膚のシワや張力の方向を考慮した、形成外科領域特有の知識であり、一般的な医学教育では扱われません。炎症が落ち着いてから袋を切除するときには、切開排膿の傷跡に沿って切除せざるを得ないため、切開排膿のときから形成外科での処置を受けることをおすすめします。
まとめ
粉瘤感染は、一見単純な症状に見えて、適切な処置を行うためには専門的な知識と経験が必要です。切開のサイズや向き、縫合の有無といった判断ひとつで、治癒までの期間も傷跡の仕上がりも変わってきます。
粉瘤の腫れや痛みでお困りの方は、自己判断で様子を見ず、形成外科専門医のいるクリニックへの受診をおすすめします。
